賃貸借の終了等に伴う土地明渡請求訴訟などは、第一審を地裁として、訴訟事件として扱われます。訴訟事件に対する手続として非訟事件があります。

借地権の法律関係に関する事項について、賃貸人に代わり、裁判所が通常の訴訟手続によらず、簡易な手続で賃借人に変わり、借地人に対し地代や承諾を決定する手続です。一般の人でも容易に手続ができるように、申立書も必要箇所をチェックする簡易な書式が用意されています。

借地非訟事件で取り扱うことができるのは、以下の5ケースです。

  1. 借地条件変更申立事件(借地借家法17条1項)
  2. 増改築許可申立事件(借地借家法17条2項)
  3. 土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件(借地借家法19条1項)
  4. 競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(借地借家法20条1項)
  5. 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(借地借家法19条3項,20条2項)

(①)借地契約では、建物の種類(居宅・店舗・共同住宅など)・建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)・建物の規模(床面積・階数・高さなど)・建物の用途(自己使用・賃貸用・事業用など)等を制限している例が多く見られます。それに反して、建物を使用するときには、地主の許可が必要とされる借地契約が多いです。地主が承諾しないときには裁判所が代諾許可を出します。


(②)借地契約には,借地上の建物の建替え(改築)・増築・大修繕等をする場合には土地所有者の承諾が必要であると定めている例が多く見られます。それに反して、建物を増改築するときには、地主の許可が必要とされる借地契約が多いです。地主が承諾しないときには裁判所が代諾許可を出します。


(③)借地契約が土地の賃貸借契約の場合,借地権者が借地上の建物を譲渡するときは,(これに伴って土地の賃借権も移転することになるため)土地所有者の承諾を得る必要がありますが(民法612条),土地所有者の承諾を得られないことがあります。地主が承諾しないときには裁判所が代諾許可を出します。


(④)③の応用
競売又は公売で借地上の建物を買い受けた人は,(これに伴って土地の賃借権も譲り受けることになるため)土地の賃借権の譲受けについて土地所有者の承諾を得る必要があります。地主が承諾しないときには裁判所が代諾許可を出します。


(⑤)③④のとき
土地所有者には自ら土地の賃借権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利(「介入権」といわれています。)が与えられています。土地所有者は,裁判所が定めた期間内に限り,介入権を行使する申立てをすることができます。


借地非訟事件の手続は,おおよそ,以下の手順で進行します。多くの事件は,特段の事情がなければ,概ね1年以内には終わっています。借地権者(申立人)が,民事第22部(東京地裁の場合)に申立書を提出する。

裁判所が,第1回審問期日を定めるとともに申立書を土地所有者(相手方)に郵送する。

裁判所が,鑑定委員会に,許可の可否,承諾料額,賃料額,建物及び借地権価格等について意見を求める。

裁判所は,第1回審問期日を開き,当事者(申立人及び相手方)から陳述を聴く(必要に応じて第2回,第3回と期日を重ねる。)。

鑑定委員会が,現地の状況を調査する(当事者も立ち会う。)。

鑑定委員会が,裁判所に意見書を提出し,裁判所は意見書を当事者に送付する。

裁判所が,鑑定委員会の意見について,当事者から意見を聴くための最終審問期日を開き,審理を終了する。

裁判所が,決定書を作成し,当事者に送付する。

以上裁判所HPより

http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html